勇気のエチュード ♯0

 病室に来た僕は、ベッドで眠る一人の少年を見つめていた。彼の頭には包帯が巻かれ、口には酸素マスクがつけられている。初めて見た時は思わず言葉を失ってしまったものの、弱々しく降る雪を窓から眺めているうちに、彼の顔を見られるようになった。  命に別状がなくて、本当に良かった……  僕は膝に手を当て、彼に顔を近づけた。  「不和くん。吹奏…

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勇気のエチュード ♯1『舞台』

 ハリウッドミラーに映る私の丸っこい目は、アイラインとつけまつ毛によってひときわ目立っている。  楽屋内のテーブルに置かれたポテトチップスの袋の色は、季節限定のピンク。その中から漂う梅の匂いに嫌悪感を覚えながら、顔にハイライトを入れていく。  その時、赤茶色のチュチュをまとった落合 葉月が、「うそ!」と声を上げてドレッサーの椅子から…

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勇気のエチュード ♯2『悪夢』

 「ん……?」  ガタンゴトンという揺れにようやく気づき、目を開けると、私は列車の中で赤いシートに腰かけていた。  私、なんでここに……?  顔を上げると、見知らぬ男性が向かいの席に座っていた。  声を上げたいのに上手く息が吸えない。立ち上がろうとしても体が動かず、まるで椅子に縛り付けられているみたいだった。  男の人の右目は…

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